大阪市立美術館の「フェルメール展」に行ってきた

私は美術館は嫌いである。

まず観てもよく分からない。これは単に知識がなく、それゆえに興味がないから分からないだけだろう。

もう一つの理由は、美術館という鑑賞スタイルが好きじゃない。みんなで寄ってたかって一つのものを観るのはじっくり鑑賞できない。人をかき分けるのは好きじゃないんだよ。人が多ければ多いほど苦痛になる。映画館と違って混雑具合の予想が立てにくいので、あらかじめ人が少ない日を狙うのが難しい。

そんな感じだから、美術館に自ら行くことはなく、たいていワイフに誘われていくんだけど、美術館に行くたびにいつも舌打ちをして出ることになる(実際は舌打ちなんてしないけど)。だから、最近はなるべく美術館行きは断るようにしている。

美術館が嫌いなりに、私がやっている「美術館ハック」がある。それは、一旦全体をざーっと見て回り、再び戻って気になったところを重点的に見直す、という方法だ。おそらく立花隆さんの本で読んで、実践してきたんだと思う。

混んでいるところはそもそも見ずに飛ばすこともある。だから自然と不人気作品ばかりを見ることになるけど、逆にそういう作品に価値を見出すことこそ意味のあることだと思う。まあ、大抵は「よく分からないな」と思うだけで、さっさと出ちゃう。もったいないからと意地で見ようとしたりしない。1500 円で5分しか見ないとしたらもったいない。そう、やはり私は最初から美術館には行くべきではないのだ。

さて、現在フェルメール展が日本で開催されており、義理の母がフェルメール展に行くという。最初は東京で、今は大阪で開催されている。私も行かないかと誘われて、まあ大阪旅行に行けるなら行ってもいいかなとオーケーを出した。そんなわけで、急に義理の母と2人で大阪に行くことになった。10 日前のことだ。

フェルメール展 │ 大阪市立美術館
www.osaka-art-museum.jp/sp_evt/vermeer

TOPページ | フェルメール展 Osaka
vermeer.osaka.jp/

10 日前までフェルメールに関する知識はほとんどゼロだった。フェルメールと聞いて、かろうじて「真珠の耳飾りの少女」の絵を思い浮かべたぐらいだ(奇跡的に知っていた)。フェルメールがどこの国のどの時代の人かも知らない。全くのフェルメール弱者だ。だから美術展に行くまでに本を買い集めて勉強してみることにした。結局フェルメール関連の映画を3本と 30 分の解説ビデオを鑑賞し、書籍は9冊読んだ。結構詳しくなったつもりである。

参考:
[映画] “Girl with a Pearl Earring” – 読書ナリ
dokushonary.com/2019/04/11/film-review-girl-with-a-pearl-earring/

[映画] 『ナチスの愛したフェルメール』 – 読書ナリ
dokushonary.com/2019/04/13/fim-review-a-real-vermeer/

[映画] 『フェルメールの謎 ~ティムの名画再現プロジェクト~』 – 読書ナリ
dokushonary.com/2019/04/13/film-review-tims-vermeer/

以下の産経ニュースでもフェルメール展についての記事が掲載されている。

フェルメール展 – 産経ニュース
www.sankei.com/life/topics/life-35816-t1.html#5

大阪へは行きは新幹線ののぞみ、帰りは近鉄のアーバンライナーで、日帰り旅行。美術館の開く朝一に行き、夜に名古屋に戻ってきた。

[大阪] アーバンライナーに乗ってきた – 読書ナリ
dokushonary.com/2017/06/09/urban-liner/

フェルメール展が開かれた大阪市立美術館は大阪の難波にある。初めて行った美術館だ。


すぐ近くにあべのハルカスがある。


美術館ロビーのパネル。

最近は混雑状況を Twitter で発信する美術館が増えた。大阪市立美術館もそうだ。東京展では 68 万人が来て、時間指定予約が必要だったようだが、大阪展は比較的すいている感じだ。ゴールデンウィークになるとちょっと混雑するのかも。だから、混雑に関してはあまり心配していなかった。

フェルメール展【館内情報】※発信専用 (@vermeer_info) | Twitter
twitter.com/vermeer_info

チケットは事前にネットで購入できる。大阪展は特に日付や時間の指定はなく、単に入場券を予約購入するだけだ。QR コードが書かれたチケットをプリントアウトして持参した。当日のチケット確認も QR コードをスキャンするだけだから一瞬だ。クレジットカードで支払いができ、当日売り場に並ばなくていいので、このスタイルはいいと思う。


入場時に通常チケットは一応もらえる。

大阪市立美術館へは開館直前に到着。7、80 人ぐらい並んでいたが、開館するとスッと入れた。

今回の大阪のフェルメール展では6点が公開され、さらに同時代の作品も展示される。鑑賞における私の作戦はこうだ。まず真っ先にフェルメール作品を観に行って、その後一旦最初に戻って他の作品も観つつ再びフェルメールを観る。2017 年に大阪へ「バベルの塔」を観に行った際は大変な混雑だったが、この作戦のおかげでゆっくり作品を観ることができたからだ。

[大阪][国立国際美術館]「バベルの塔」展へ行ってきた – 読書ナリ
dokushonary.com/2017/08/17/babel-at-osaka/

中に入ってみると、結構すいてる! 2周したけどどちらもゆっくり観ることができた。

大物作品の展示だし、仕切りが遠くに配置されて、遠くからしか観ることができないのかなと思いきや、1m ぐらいの至近距離で鑑賞できた。本で見たあの作品がすぐ目の前で観れるんです。

そして現物を目にすると・・・思考停止しました。本や映画でそれなりに「頭でっかち」になっていたんだけど、現物の前では知識が出てくる余裕なんてなく、ただただ観ていただけだった。美術作品について詳しくない私でも、鮮やかな色や光の感じがとても綺麗。品のいい雰囲気の作品ばかりなので私の好みだった。

やはり事前に書籍等で勉強しておいて断然よかった。「私は頭じゃなく絵そのものを観るのよ」と通ぶっても、所詮素人はいろいろ見落としている。絵画の相互の関係性や画家の思いも、単に画を観るだけでは分からないでしょう。絵画を存分に楽しむには、それ相応の知識が必要なのだ。まあ、前述の通り、絵画を前にすると情報を思い出す余裕もなかったんだけど、鑑賞 “後” に「残るもの」が違うはずだ。

そういうわけで、読書という観点でも、事前に勉強し実際の絵画を観る行為は、「学んで実践」という読書の一番ベストな形態でもある。


読んだ本9冊と DVD 。

今回は初めて鑑賞に単眼鏡を使う試みをしてみた(美術館が好きでもないのに、こういうところにはこだわる)。細部をじっくり観てみたいし、混雑していても遠くから鑑賞できる。今回の展示は至近距離での鑑賞ができたが、あまりに顔を近付けるのはマナー違反だ。やはり単眼鏡があると便利だ。実際に単眼鏡を使うと、結構ちゃんと観れた。明るく観られる単眼鏡を使ったおかげでもある。今度から美術鑑賞に単眼鏡は必須だね。私以外にも単眼鏡を使っている人がちらほらいた。なお、この単眼鏡は、美術館を出た後あべのハルカスの展望スペースでも役立った。

やや不満だったのが、ライトが強く、絵画がその反射で見えにくかったこと。ニスがたくさん塗っていあると、ますますライトが反射する。そのあたりのライティングをしっかり調整してほしかった。暗くすると年寄りには見えにくいかもしれないけど、それは年寄り側で適応すればいい。ライティングは美術館側の大きな問題だ。

私はどちらかというと街の風景の絵が好き。フェルメールも街の風景を描いた作品が2作あるが、そのどちらも今回の展示会には来なかった。いつか観てみたい。

ショップでは珍しく公式図録を買うことにした(3000 円)。ポストカードと合わせて買うと、自宅まで無料発送してもらえるので、ポストカードと合わせて購入。ポストカードは「天文学者」と「デルフトの眺望」だ(どちらも今回の展示にはなかった作品)。公式図録は後日レターパックで届く。


買ったポストカード。

フェルメール関連本を集める中で『フェルメール デルフトの眺望』(アンソニー・ベイリー、白水社、2002)がネットでは新品で手に入らなかった。ちょうど大阪難波のジュンク堂書店で新品の扱いがあることを honto の店舗在庫情報で知り、フェルメール展の後本を買いにいった。マルイト難波ビルの3階にあるジュンク堂書店で、場所が分かりにくかったよ・・・。こんな感じで、展覧会の後もまだしばらくフェルメール関連の本を読む予定だ。


美術館の帰りに購入。

今回のフェルメール展で、私はすっかりフェルメールの「虜」になってしまった。『知識ゼロからのフェルメール鑑賞術』によるとフェルメールの魅力は「小さく、少なく、物静か」であるという。フェルメールの作品は 30 ちょっとしかないし、たいていの絵の大きさも小さい。そして日常を描いた静かな絵ばかりだ。巨大な勇ましい絵を大量生産する画家よりも、小規模でも素晴らしい作品を出しているところがフェルメールのすごさだ。

そして、これはまさに私が仕事に通じるものがある。私はいろいろな事業に挑戦しているけど、結局一番好きなのが物書きだ。それもセルフパブリッシングというスタイルが好き。ビッグになるのは難しいけど、たとえ一人でも読んでくれる人がいるのがどこかにいると思えることが嬉しい。

フェルメールが近年人気が出ているのも、謎に包まれていることが関係しているのかもしれない。『笑うフェルメールと微笑むモナ・リザ』に以下のように書いてある。

「フェルメールの絵の謎は、このような曖昧性、絵を見る人にその解釈が託されていることから生じている。つまり、正解が唯一であるような謎というよりも、正解がいくつもある謎なのである。」(p110)

フェルメールはほとんど当時の情報が残されておらず、詳細が明らかになっていない。鑑賞する側としては、研究が進んでいて情報がはっきりしている作品の「解釈はこれです」という押し付けではなく、「まだ謎だらけなんだ」といいう想像の余地があるところがいいのかもしれない。

フェルメール作品は欧米の美術館に散らばっており、なかなか観ることができないし、まとめて鑑賞できる機会も非常に限られている。非常に貴重な体験だった。

読んだ本
・『もっと知りたいフェルメール』(小林 頼子)
・『フェルメールへの招待』(朝日新聞出版)
・『語りたくなるフェルメール』(西岡 文彦)
・『フェルメール 光の王国』(福岡 伸一)
・『フェルメールと天才科学者』(ロー ラ・J・スナイダー)
・『フェルメールのカメラ―光と空間の謎を解く』(フィリップ・ステッドマン)
・『知識ゼロからのフェルメール鑑賞術』(森村 泰昌)
・『消えたフェルメール』(朽木 ゆり子)
・『笑うフェルメールと微笑むモナ・リザ』(元木 幸一)

観た映画
・『真珠の耳飾りの少女』(2003)
・『フェルメールの謎 ~ティムの名画再現プロジェクト~』(2013)
・『ナチスの愛したフェルメール』(2016)

観たビデオ
・『フェルメール -静寂のフェルメール- (世界・美の旅16)』(株式会社日経映像、2006)

その他の写真はこちら。
gallery.dokushonary.com/#15553748988352

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